死んだ土を生きた土へ  
土は死んでいる科学的な土作り知識の向揚農業三原則とは何か
農業に必要な有機質とは何か酸欠の危機もし微生物がなくなったら
発酵による肥料化とは土作りの基本マニュアルトップページへ
 
     
  土は死んでいる
 農業の近代化が押しすすめられる今日、一方では土作り運動の提唱が全国的な広がりを見せており、今日までの多肥多薬農業に対する反省が少しずつ強まって来ています。日本は多肥多薬農業をもって生産性を世界有数のものとする一方、世界に名立たる薬害天国の汚名も負っています。
 今日、土作りが叫ばれてはいますが、これまでの多肥多薬農業は農地本来の地力を低下させ、残留農薬の毒性は人畜・微生物に大きな脅威を与えています。ひいては自然界にも大きな変化をもたらしているのです。
 
  科学的な土作り知識の向揚
 農地の荒廃、地力の低下は、酸欠土壌の出現と病害の発生という二次公害を引き起こしています。その原因の分析は各地で論じられてはいますが、農地としての“生きた土”に対する科学的な考察に欠けています。
 今日の土作り運動の真のあり方について、更にはその実践において農家一人ひとりの自覚と、生きた土に対する科学的知識の向揚が望まれるところです。
 
  農業三原則とは何か
 20年ほど前から土壌微生物の普及研究を推進してきた私の理論は自然科学的なものであり、現在の農業理論は科学的なものであるといえます。
 農業とは単に光、水、空気の三原則では有り得ません。そして今日までの三原則の誤った方向性が、今農業に土作りを叫ばせなくてはならない危機状態を生み出しています。
 現在、日本各地で赤潮が発生し、河川にはヘドロが堆積し、多肥多薬農業の結果著しく低下した地力に対する無理解な有機質の多投は、酸欠という新たな二次公害を引き起こしています。この様にまさに危機に瀕した今日の農業の姿は、自然界の科学的構造を無視した結果です。
 「土は生きている」という諺があった様に、昔の農業には今日の様な問題は起こってはいませんでした。かつては、生きた土の上で自然に逆らわない農業がなされていたからこそ「百姓は馬鹿でも出来る」といったことが言われていました。早く馬鹿でも出来る土にかえすことです。それが土作りだと思います。
 そのためには“生きた土”とは何かということを科学的に知る必要があります。昔より収量が上がったということのみから、化学的に進歩したように考えがちですが、今日の日本農業は品質改良によってのみ支えられているのが現状です。化学肥料も文明の利器であり、農薬もまた使用のしかたによっては有益な結果を出すことが出来るにしても、万能ではないことに気付くべきです。
 私の申し上げる農業五原則とは自然科学の原則に基づくもので、光と水、空気、生物、無機物であり、すなわちこの地球上に存在し農業にとって重要な働きをするものです。
 今まで農業は光と水と空気があれば良いとされ、NPKのみが肥料であるように考えられてきました。土の中より新しい生命体を育て上げるという農業本来の大きな使命を忘れ、NPKと農薬とで作物は作られているような錯覚に陥っていたのではないでしょうか。
 川の中や土の中に棲息する微生物は、有機物や化学肥料を植物の栄養に変える働きをするものです。現在の農業は地力増強のため安易に有機を投入していますが、有機物が土の中で腐るという現象はすべて微生物が土中で行う生物燃焼によるものです。大気中で物を燃やすことを酸化燃焼といい、物が腐ることを生物燃焼といいます。どちらも大量の酸素を消費し、炭酸ガス等の有害ガスを発生します。
 現在農地に多発するガス障害と酸欠は、その原理によって二重に発生し、作物の呼吸作用に大きな障害を起こしています。農業に於ける有機質とは何かということを根本から考えなくてはならないでしょう。何故昔からノコクズ、藁などは堆肥と区別されていたのか、何故手間を掛けて堆肥化がなされたのか。それは長年の経験から割り出された科学ではないでしょうか。「未完熟な堆肥は根腐れする、下肥も良く腐らしてから使え」等と、口伝えに子孫に残された長年の経験がその理論を作り出したのでしょう。
 現在、有機は土の中でやがて分解して堆肥になるという良い面だけが考えられ、その有機が土の中でどのように分解されて植物に吸収されるか、その解明は殆んどなさていません。投入された有機は土壌中で酸素を奪い植物にとって有害なガスに分解され、土中空間に充満し植物の根の呼吸作用を防たげ、光合成によって作られたグリコースの酸化燃焼に必要な酸素を先に消費してしまいます。
 昔から藁は土の表面に敷き藁として利用されていますが、それは分解された有機物は水に溶解して土中に送られ、発生した有害ガスは空気中に放散させることによって障害を少くする一つの知恵でもあったのです。
 
  農業に必要な有機質とは何か
 一般に有機質といっても、それすなわち、農業に有効な有機質というわけではありません。ただ単に有機を入れれば良いという考えは大変危険です。
 では農業に有効な有機質とは何かというと、土中にて嫌気性分解しない微生物分解が完了したもので、炭素指数が6以下であり有害ガスを発生しないものです。つまり、メタン硫化水素、炭酸ガス、リグニンなどとなって分解していく過程にある有機は農業的に有害なのです。
 昔は何故手間をかけて堆肥を作ったか。それは以上の様な欠点をなくすために必要だったからです。つまり堆肥とは有効有機質に好気性微生物が変態して有機質プラス微生物となったものです。この様に有機質に大量の有効好気性菌が繁殖した有機と有効微生物混合品が昔の堆肥なのです。
 
  酸欠の危機
 酸欠土壌の問題にしても、ただ単に土の中に空気を入れてやれば良いわけではありません。
 自然界の酸素の供給は植物の作る量が30%、水中で発生するものが70%とされています。つまり植物に対する酸素の供給は大部分が微生物、単細胞類、水藻類が炭酸同化作用を水中で行うか、または地表に於いて炭酸同化作用をすることによって大量の酸素を水中に溶解させ、その水が土中に浸透することにより植物の根に酸素を供給しているのです。その酸素を作る単細胞も微生物であり、有機質を分解するものも微生物なのです。この様に土や水の中の微生物はあらゆる形で農業そのものに大きな貢献をしています。
 この偉大な自然界の働きを無視してその働きを破壊したならば、自然界に大きな脅威が起こるのは必然です。それが土の悪化ではないでしょうか。除草剤で草を枯し同時に酸素を作る単細胞も死滅させ、農薬によって有効微生物も死滅させる現在の多肥多薬農業は、日本中の農地が死の土と化す危機性があるのです。
 ちなみに除草剤の力は地表1センチの間で効力を発揮するとされていますが、実はその地表1センチの土の中にこそ、植物に一番必要な栄養や酸素を作る工場群があるのです。
 私達動物は口より物を取り入れて胃の中で消化し腸で栄養を吸収します。そしてその栄養を肺から取り入れた酸素で燃焼させてエネルギーとして活動します。その私達の胃腸の中にも微生物が存在し、口より取り入れた食料を分解し、水溶性としています。もし私達の胃の中に分解酵素の様な微生物がいなくなったらどうなるでしょう。口から入れた食料を分解することなくそのまま排出するようになることでしょう。
 動物は胃袋を体の中にもっています。植物は胃袋を体の外に持っており、それは土でありその土の中の土壌微生物が私達の胃の中の微生物にあたるものです。あらゆる微生物がその中でお互いの役目を果たすことにより発生する代謝エネルギーが次の生物のエネルギーとなり、そのエネルギーは次の生産のエネルギーとなって自然界は回転しているのです。
 
  もし微生物がなくなったら
 もし微生物がなくなったらどういうことになるでしょうか。酒がこの世からなくなり、味噌・しょう油もなくなり、漬物も出来なくなり、田畑の植物も腐らなくなり、一切の物が腐らなくなり、昔から言われる“土にかえる”という諺もなくなるでしょう。
 なぜ昔から“土にかえる”という諺があったか。それは微生物の働きで分解され土になっていたからです。それは皆、土壌微生物の働きなのです。“土にかえる”“土は生きている”といった昔からの諺は、土の中に目には見ることの出来ない生命体があり、それが大きな力をもっているということを知らしめたものではないでしょうか。他にも“大水が出ると豊作になる”“流れ川三尺清い水”……等、数え切れないほどの諺の意味するところは、昔からの尊い科学なのです。
 私達がまだ幼い頃、田畑には下肥がまかれ、学校の農業の授業では友達と糞尿をかついで撒布したことを記憶しています。その頃は農薬も少なく、川にはメダカが群遊し、その川の水藻にはエビが無数に泳いでいたものです。すなわち川が生きていたといわれる時代です。何故その川が死んだのでしょう。
 川が死んだ、土が死んだ……それは“原生動物群”の原理がなくなったからです。“流れ川三尺清い水”とは川が1メートル流れることによって浄化されるという原理です。川の水の中には大量の微生物が生凄しています。その原生物群は水中に溶解した汚物を栄養源として食べて浄化しているのです。その原生動物群は1立方センチの中に300匹以上いるといわれています。その生物群もエビも、一切の生物が死滅してしまった現在、川の浄化は誰がするのでしょうか。
 同じ様に土の中にも1立方センチの中に昔は3億の微生物が棲んでいたものです。その微生物は空気中より窒素を土中に取り入れ、投入した魚粕等の有機質を分解し自分達の栄養として利用し、その代謝エネルギーは植物のエネルギーとなって再び地上にもどり私達の食料となり、大樹となって自然のサイクルを形成しているのです。
 土の中には1グラム中1億5000万〜3億の生物が棲んでいる社会があります。そのミクロの社会のあらゆる種類の生物が自分の分野に於いて責任を果たし秩序を守り自然界の一員として務めを果たしていたものが“生きた土”だったのではないでしょうか。
 現在私達人間は微生物の社会にどんなことをしているでしょう。栄養を与えず、ただ化学肥料と毒薬のみを与え生命体を殺し、土中の社会に変化をおこしているのが事実なのです。
 団粒構造とは、固層、水層、気層から成ります。気層とは空気層のことですが、それが現在ではガス層と変わっているのではないでしょうか。その一つを考えても現在と昔では有機質に対する考え方が変っているのです。
 よく私はこんな例えで有機の説明をします。「貴方は鶏の水炊きを食べますか」と問います。殆んどの場合、食べるという答えが返ってきます。そこが間違いなのです。鶏の水炊きを食べると食中毒を起します。鶏とは生きたままの名称であり、毛が生え腸にはその糞をもったままの生物なのです。それをいきなり水炊きすると糞も毛も一切が水炊きされることになります。それが鶏の水炊きであって、私達の食べている水炊きは“かしわの水炊き”なのです。かしわは鶏の毛をむしり腸をとり害になる物をとり除いて肉となし、私達の栄養となる様に作られた物なのです。鶏がかしわになるためには人の力がいるのです。
 同じように、化学肥料が作物の栄養になるためには自然界の大きな力が必要です。硫酸アンモニアが硝酸態窒素となるためにも硝酸バクテリアの力が必要なのです。あらゆる微生物の働きによって植物の栄養が作られています。昔作られた堆肥もその一例なのです。その堆肥の原料が藁であり有機物なのです。
 土という鍋の中で同じ様に鶏の水炊きが出来、その害毒が植物に食中毒を起さないようにすることが、有機の選択ではないかと思います。
 現在使用される有機物(堆肥)とは、畜産堆肥がその80%を占め、その殆んどが未分解有機物です。それらを水洗いすると、殆んどがノコ屑であり藁の状態です。堆肥とは前にも述べた様にノコ屑でも藁でもなく、そういった原料が微生物によって分解された物であり、発酵の際に出る高温により有害菌が死滅した物質なのです。
 現在の農業と昔の農業の違いは、土の中に棲んでいる微生物に対する考え方の違いではないかと思います。昔の農業は化学肥料の様な文明の利器もなく、ただ土壌微生物の働きに頼っただけの農業だったのです。
 現代の農業とは、文明の利器を利用して昔の土を作ることではないでしょうか。それには良く発酵させることを忘れず、未完熟な有機をそのまま使用しない様に心がけなくてはなりません。そうすることで増収につなげることが土作りだと思います。
 土作りとは“土は生きている”という考えで土の中の生命体を大切にすることではないでしょうか。一言で言えば昔の土に返すことであり、やたら物質を投入することなく、昔の土とは何であるかを知ることが大切です。
 
  発酵による肥料化とは
 完熟堆肥を安定的に供給するにはどうすればよいか。私はこの答えを下水道汚泥の肥料化に求め、今日成功しております。
 従来、下水汚泥の肥料化は野積みによる自然発酵に頼っていました。野積み中に脱水汚泥が自然に発酵し、発熱することにより水蒸気を出し乾燥する。この現象により、下水汚泥の堆肥化を考えて来ました。
 一般に、堆肥、厩肥の場合、切りかえしが行われると共に、竹の節を抜いた筒で空気の補給を計っているものがよく見受けられます。これは好気性の発酵を促すためのものであり、これによって発酵熱が上がることが認められています。
 下水の消化槽で消化された汚泥は、嫌気的状況の中にほば1ヵ月程度おかれています。これに空気を吹き込めば瞬間的に多量の好気性細菌が増殖して発酵熱を発することに着目し、脱水汚泥に下部より空気を吹き込んだところ、短時日にして70℃以上の発酵熱を生じました。この方法は、ゴミコンポストに於けるベルデュール・プロセスに似た方法と考えられます。
 脱水汚泥の発酵過程は、室内に数百トンの脱水汚泥を収容し、エアーレーションすることにより好気性細菌の増殖を促し、生じる反応熱を蓄積して高温帯発酵とし、その熱を放散させることによって汚泥中の水分を蒸発させて乾燥を行います。
 更に一歩進めて高温帯菌の繁殖した汚泥を種汚泥として、脱水汚泥に接種することによって、種汚泥中の高温帯細菌、放線菌が作用して、発酵熱が70〜80℃程度まで上昇します。この発酵過程に於いて、一部の繊維質や脂質等が分解されるのではないかと考えられます。しかも汚泥中の多くの病原菌や寄生虫も死滅します。
 以上の通り粗大未分解有機物を分解、低分子化、安定化(腐熟化)します。
 この高温状態のとき、吹き込みの空気量を極めて大きくしてやると、汚泥中の水分が蒸発し含水率25%程度の堆肥となり、放熱損失が発熱量を上回るので汚泥は冷却されます。これを粉砕機にかけた後20キロ入りの袋に包装して製品とします。
 この堆肥に含まれている微生物の特徴は、放線菌群、糸状菌群、緑藻菌群と一般菌すべてを網羅し、確認されたものだけでもその数135〜6にものぼりますが、中には農業サイドにおける有害菌も含まれています。共生生活を営む微生物群の中にはその有害菌がいなければ生息出来ないという高度な有益菌もあります。つまり、天然土壌微生物群ということです。いうなれば微生物の特殊社会ではなく、バランスと安定の上に立った一般微生物社会を形成しているわけです。
 これが根圏土壌微生物のバランスを回服して連作障害を回避する大きな要因ともなっております。

日本微生物農法研究会“土は生きている”より

  土作りの基本マニュアル
1.完熟堆肥を使う時
 (1)  未完熟物を土壌中に鋤込むと、雨や水を冠水した時に土壌中で発酵(腐敗)を起こし、2次3次発酵により、土壌中の酸素を消費し、土壌が酸欠状態になり、根腐れ、立枯れ、青枯れが出る。
  未完熟の例(生わら、籾殻、鶏糞、オガクズ、チップ入り畜産堆肥)
 (2)  前作残存成分が少ないこと
  例(生わら、残野菜の鋤込み)
 (3)  土壌中で再発酵しない完熟した有機質を多く含んでいること
 (4)  耕土が深く、排水が良いこと

2.土作りの徹底
 (1)  現在の土壌状態はどうか?
  土壌分析をする。
  例(PH,EC,ORP、線虫、水分率、有機率、C/N比)
 (2)  消石灰を鋤込み、有害病原菌を押込むこと
  (農薬代りに使う 10アールに100キログラム)

3.堆肥による有機の補給
 (1)  10アール相当の土壌に対し、数トンの堆肥を投入する。
  年ごとに消耗するので、毎年度数トンの堆肥を入れる(畑作)
  (放線菌含有 有効微生物入り堆肥)
  (水田、イ草、蓮  数トン)
 (2)  元肥には、化学肥料の鋤込みを禁止する。
  化学肥料は、追肥として表層に播く。
  また、未完熟堆肥も鋤込み禁止とする。

4.植物と酸素の関係
 (1)  定植前には、元肥と同時に土壌用酸素供給剤を全面鋤込みする。
 (2)  定植時に有害微生物抑制剤を根の回りに播く。
 (3)  定植後は、酸素供給剤を葉面散布する。

5.追肥
 (1)  動物性有機(魚粉、カニガラ)
  化学肥料は表層施肥
 (2)  微生物入り堆肥を表層より追加
 (3)  特に農薬を散布した時は、その数日後有効微生物入り堆肥を表層投込みで補う。
 
土は死んでいる科学的な土作り知識の向揚農業三原則とは何か
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